2022-11-17-Wed
「レモネーディア」という珍しい柑橘をいただいたのでマーマレードに。
初めて&少量なので試作だけ。
こちら、「かんみ」という柑橘サブスク事業もされている清原優太さんが、レモネーディアをお裾分けしていただけるとのツイート↓を見て飛びついた次第です。
昭和40年代に消えた希少種『レモネーディア』を復興されている方がいたので購入してみました!🍋
— 清原優太🍊 (@kanpeii) 2022年10月25日
○リモネンがレモンの数倍入ってる!らしいのですが、味はまろやか(璃之香に近い感じ)お菓子やマーマレード造りにいいかも?
○緑の状態でも生で食べられる→黄色の時にはフルーツとして使えそう pic.twitter.com/g3Q0m2kvuj
レモネーディアという品種は「昭和40年代に開発されたが当時のニーズに合わず消えていった希少種」だそう。今回いただいたのは愛知県の河合果樹園さんが復興、無農薬で栽培されているもの。
文旦、オレンジ、レモンを合わせた味、という触れ込みで、そんなスリーフルーツマーマレードを地で行くみたいな柑橘があるならぜひ煮てみたいし、清原さんが上記ツイートで写真を上げている解説紙にも「マーマレードは絶品」とある。そう言われては黙っていられない!という思いで勢い連絡をさせてもらったのだけど、同時に「ほんまかいな(=我々マーマレードガチ勢からしてみたらどうなのか?)」という、意地の悪い気持ちもあった。
実際に手にしたレモネーディアは、写真で見ていたレモンやライムっぽい印象とは異なり、けっこう柔らかい。「手で皮が剥ける」とのことで、たしかに触り心地は早生みかんに近い。でも外皮の香りはぜんぜん違って、すごく爽やか。すだちやかぼす、なんならベルガモット的な香酸柑橘方面である。なんだこれ。
こういうよくわからない柑橘でマーマレードを試作するときは、失敗を恐れずにとりあえずなんの工夫もないレシピで。ということで、まずは半割にして果汁を搾る。味のバランスを考える目的で果汁を一口舐めてみると…甘い!いや、強い甘みではないけど、上記の香酸柑橘をイメージして強い酸味を覚悟していた舌にはなかなか衝撃的な甘さ。なんだこれ…。
皮が薄くて柔らかく、ナイフでワタをきれいに取るのは難しそうなので、ワタ付きのまま茹でて後で刮ぎとることにする。
皮を茹でてると、ペクチンが茹で汁に溶け出しているかどうかというのは、ある程度見た目でわかる。しかしこのレモネーディア、ぜんぜんペクチン感なし。バレンシアオレンジのときみたい。皮が薄くて柔らかいので予想してはいたが、さてどうしたものか。
外皮を1時間ほど茹でたところで、じゅうぶん柔らかくなったので引き上げる。茹で上がった皮の香り、あーこれ知ってる、ダイダイの皮を茹でたときと似てる。いやでも、ダイダイより少し爽やか寄りで、清涼系ハーブ(レモングラス?タイム?スペアミント?)の香りを足したような感もある。なるほど、こういう方向の風味になっていくんだな。だとすればレモンとは相性良さそうなので、ペクチンが不足するならレモン足すのはありかも。
スプーンで外皮からワタを刮ぎ取って、外皮を細く刻む。皮が薄くて柔らかいので、それほど薄く刻む必要はない。
で、ふと思ったのだけど、この、刮ぎ取ったワタの方もめっちゃ柔らかいな?筋っぽさもなく、ゆずを茹でたときみたいな。つまり、ワタも全部食べられるのでは?ワタも入れればそこそこペクチンの固さが出てくるのでは?一口食べてみたが苦味も少ないしぜんぜんいけるな…
ということで、せっかく取り分けたのだけど外皮といっしょにワタも入れることにする。実際にはワタごとザクザク刻むラクチンレシピでも良いかもしれない。
外皮とワタ、果汁と茹で汁を合わせて、グラニュー糖を入れて煮詰めて仕上げ。ワタのおかげでトロみが良い感じ。
瓶詰めの際、最初と最後でけっこう煮詰まり具合が変わるので、普段は回し注ぎをするようにしてる。が、試作のときは一瓶ずつ順番に充填してしまい、固まり具合にあえて差をつけ、煮詰め具合にフィードバックする。
今回、一晩おいて冷ました時点で最後の瓶だけバッチリ固まった感じ。つまりもう少し煮詰めて仕上げにしても良いか、と思っていたけど、さらに丸一日おいたら最初の瓶もきれいに固まった。じゃあまあ、これくらいで良さそうか。
さて、味はどうか。「絶品」なマーマレードになってるのか。
口に含んでまず感じるのは、軽い酸味と明るい芳香。まろやかな甘味と苦味。そしてミントを思わせる爽やかな余韻。とにかく香りがよく爽やかでまろやか。バランスの良さも含めて、レモネーディアの特徴が良く出ている。単独でこれほどまでに特徴とバランスを兼ね備える柑橘品種はなかなか思いあたらない。ふつうは特徴が出ると何かしらそちらへ偏ってしまうものなので(だからスリーフルーツマーマレードが美味いんである)。さらに、作る側としては「ワタも全部使えるよ!」というのはマーマレードの大きなメリットになり得るので、その加点も大きい。
なるほど「絶品」は伊達ではないぞ。
レモネーディアマーマレード、商品として販売するとなると問題は知名度だろうか。初見で柑橘の品種として認知いただけるだろうか。レモネード味?とか思われないかな。ていうか「レモネード」という柑橘品種もあったりしてたいへん紛らわしい。
あるいは「なんだろう?」と気にして買ってくれる人もあるかもしれないが、それには「よくわかんないけど、ここのジャムなら間違いなく美味しい」という信頼が必要だよね…レモネーディア生産者さんに恥ずかしくないようがんばる…