今日はジャムびより

今日という日に添えるジャムを。

2023-01-22-Sun

年が開けると本格的に柑橘シーズン!…には、一般的にはまだ少し早くて、2〜3月にかけて収穫が増えて店頭に並ぶ種類も豊富になる傾向。

ただし、マーマレードは完熟した柑橘よりもやや未熟のほうが作りやすくて、つまり本格的にマーマレードシーズン!

ということで今回のラインナップは、

ジャムびよりのマーマレード、これまでは柑橘以外の材料を混ぜだミックスマーマレードが多かったのだけど、やはりここは純柑橘マーマレードを。あ、夏にバレンシアオレンジをやったので、それ以来ですね。

・ダイダイ&ゆずマーマレード

…いや、他にもたくさんマーマレードを作りたかったのだけど、手間がかかりすぎて無理でした。また次の機会に。

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・ダイダイ&ゆずマーマレード

ダイダイというのはつまり橙色の「橙」で、果皮の色が濃く鮮やかな柑橘の一種。店頭でほとんど見かけないのは生食にまったく向かないから。皮が厚く果肉が少ない時点で食べる気にならないし、その果汁も酸味が非常に強い。しかし加工用として、その酸味を活かしてポン酢の材料として使われたりする。

マーマレードの材料としても案外人気なのだけど、「ダイダイマーマレード」という商品は世間で一般的とはいえず、生産地の手作りマーマレードとして売られていることが多いという印象。ダイダイ、上記のように酸味が強いうえに風味に少しクセがあり、果皮の苦味も強いので、マーマレードも「万人ウケ」するタイプではない。

それでもダイダイでマーマレードを作るのは「店主が好きだから」なんですが、やや込み入った事情がある。

まず、ダイダイという品種はサワーオレンジの系統らしいんですね。「スイートオレンジ」に対しての「サワーオレンジ」、つまりバレンシアオレンジネーブルオレンジのような生食やジュースが美味いスイートオレンジに対して、酸っぱいのがサワーオレンジだと。ただしそれは単に「甘い」「酸っぱい」だけで分けているのではなくて、品種の系統として「サワーオレンジ類」という、遺伝的に一定の繋がりを持ったグループがあって、そこにダイダイが含まれる。で、そのサワーオレンジ類の代表格が「セビルオレンジ」というもので、これすなわち英国の伝統的なマーマレードの材料なのである。英国伝統マーマレードというのはこのセビルオレンジ無しにはどうしようもなく、そして日本国内でセビルオレンジを手に入れるのは非常に難しい。日本の柑橘を使ったマーマレードはもちろん美味いのだけど、英国マーマレードの「バターリッチなスコーンに合う」、その程度の異常さを再現することは不可能に近い。

そこで、同じサワーオレンジに分類されるダイダイである。おそらくはアジアあたりを起源とするサワーオレンジの共通の祖先から、それぞれ東西に別れて広がった系統なので、もちろん同じ風味ではない。とはいえダイダイマーマレード、作ってみると英国にかなり雰囲気が近というか、とりあえずスコーンに合うのでこの方針は成功と言って良い。

また、ダイダイは単独でマーマレードにすると風味のクセがそこそこ目立ってしまうが、色々な柑橘とミックスすることで、相手柑橘の風味を引き立てつつ奥行きを与えてくれる名脇役となり得る。そしてペクチンも豊富なので、なんだかんだマーマレードに向いている。

そして今回のダイダイ&ゆずマーマレード

どちらかというとダイダイが主役だが、そこにゆずを加えることで、風味に広がりとまとまりを持たせている。ちょっと酸味先行ではあるものの、香りがとてもよく、かつ苦味のきいた良いマーマレードに仕上がっている。それから、ダイダイは皮が厚くて固いものの、しっかり茹でることでモチモチとした良い食感になるので、それをじゅうぶん味わえるようにやや厚めにカットしてる。ジュレの透明感もあって綺麗。

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