2023-03-19-Sun
2ヶ月も空いてしまいまして、久しぶりのジャム製造日はもう完全に春。
ジャム煮文脈で「春」というと、やはりいちご。というか、いちご以外に「春っぽい」ものは案外少ない。もちろん青果売場に行けばキウイやらりんごやら買えるのだけど、春っぽくなくない?
春っぽい、すなわち春が旬、つまり3〜4月に収穫される材料というと、いちごのほかに思いつくのは結局柑橘類で、マーマレードである。だからマーマレードアワードの応募期間も3〜4月になってる。
というわけで今日のメニュー
・ルバーブ&いちご
旬がどうとか言いながら、ルバーブは冷凍だし柑橘類は冬に狩って保存してあるやつですが、冷凍でも遜色ないのがルバーブの良いところだし、ちゃんと保存しておくとちゃんと鮮度を保ってくれるのが柑橘の良いところなのでご勘弁ください。(皮が柔らかいタイプの柑橘の保存は難しいです。するなら冷凍。)
・いちご&ルバーブ
いちごは栃木県産とちおとめ、ルバーブは長野県産の真っ赤なルバーブを冷凍保存しておいたもの。
いちご&ルバーブは絶対美味しいのに旬がまったく被らないので作りにくいレシピ。いちごが終わった頃にルバーブが出始め、冬にハウスもののいちごが出てくるのもルバーブが終わってから。そういう意味では「自然」なレシピではないかもしれないが、とにかく美味しいので、毎年これがやるためにルバーブを冷凍してる。
材料をミックスするレシピは、その比率で味わいが変わるところに、難しさというか拘りが生まれる。しかし、いちごとルバーブに関してはどんな比率で混ぜてもその比率の美味しさがあるという、つまり誰が作っても美味しいという、ジャム屋殺しなカップリングである。いちルバしか勝たん。
ということで、考えても仕方ない、もとい店主なりの拘りをもって、いちごルバーブ比は1対1とする。いちごの甘味とルバーブの酸味、そして双方の豊かな香りの広がりをじゅうぶんに堪能できる。そしてさらに風味に奥行きを持たせるため、キルシュを加えて煮立てる。
子供も大人もスプーンでそのまま舐めたくなる逸品!
・ダイダイ&レモン&ルバーブ
こちらのルバーブも長野県産で冷凍しておいたものなのだけど、グリーンに赤が混ざったもので、使いどころを考えあぐねていた。グリーンと赤が混ざったまま煮ると、茶色っぽい微妙な色になるので…
黄色〜橙色のマーマレードであれば色もそれなりに馴染むかとの思い付きで、ダイダイとレモンのマーマレードにこのルバーブを混ぜることに。以前に文旦系の柑橘にルバーブを混ぜたマーマレードを試作して美味しかったのと、毎年作る「ダイダイ&グレープフルーツ&レモンマーマレード」のグレフルの代わりにルバーブを使うと思えば、味は間違いなく美味しいはず。
ダイダイは山口県周防大島産、レモンは広島県産の、どちらも有機無農薬を使用。
基本的にはダイダイとレモンのマーマレードを作るところに、途中でルバーブを加えるだけ。ただ、ルバーブ加えるとトロトロになりすぎて煮詰めるのが難しくなるので、別に柔らかくして潰してからマーマレードに加えるなど、工程が若干複雑にはなる。
そしてやっぱり微妙な色にはなったが、その見た目と「ダイダイ、レモン、ルバーブ」の初見には「?」な字面とは裏腹に、なんともまとまった風味に。酸味がハッキリとしつつも、ダイダイとレモンのピールの香りとほのかな苦味があとを引き、それらを支えるしっかりした甘味にも嫌らしさはない。要するに美味しいです。
見た目は微妙だけど、ダイダイと、レモンと、ルバーブが入ってるよ、ということがよく見えるし、適度なネットリ感は何にでも使いやすい。ルバーブの繊維とやや厚めに刻んだ柑橘のピールの歯触りもちょうど良いアクセントである。
こちら都内産の無農薬!
丁寧に刻んで…
…えー、ちょっとですね、これ、失敗です…。
ぜんぜんきれいに固まらなかった。マーマレードなんもわからん。
とは言いつつ、原因はいくつか考えられるので、そして夏みかんはまだたくさんあるので、修正しつつ次回再チャレンジします。夏みかんマーマレードはぜひ召し上がっていただきたいので。
あと、数日置いておくときちんと固まることもあるので、ちょっと様子見…
ところで、冒頭で触れた「マーマレードアワード」という言葉に、何のこと?と疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思うので、以下で解説しておきます。
ここで言うマーマレードアワードとは、正式には
「ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル日本大会」
という、マーマレードのコンテストとお祭りで、愛媛県の八幡浜市で開催されている。
「ダルメイン」は英国の湖水地方にあるヘーゼル家が治める領地を指し、そこで毎年開かれる「世界マーマレードアワード&フェスティバル」が、「日本大会」に対する「本家」にあたる。八幡浜市が日本大会を誘致して、今年で5回目。毎年1000品を超える応募があり、界隈は盛り上がりを見せている。
本家英国大会のほうはさぞかし歴史あるマーマレードの品評会、と思いきや、始まったのは2005年からで、言ってしまえばこちらも英国の片田舎の町おこしイベントである。しかも、ダルメインという土地が特別にマーマレードに縁が強いかというと、実のところそういうわけでもないらしい。もちろん古き良き英国貴族のことなので、マーマレードの手作りはするし「ヘーゼル家に古くから伝わるレシピ」なんかもあり、それが大会発足の足掛かりになったのは確か。だけど、柑橘の生産が盛んとかマーマレード発祥の地であるとかマーマレード消費量世界一であるとかでは、ない。発想と行動の勝利である。まあ、事業としてどれくらいの収益があるのかはわからないが(あるいは当主としてはそんなものは不要で、観光客が周辺地域にお金を落としていくことの方が重要なのかも)、毎年3000点以上のマーマレードの応募があるらしいので、イベントとしては大成功を収めている。
日本大会の方も、一般の知名度はゼロに近いがジャム煮界隈ではかなりメジャーになりつつあり、今後の益々のご発展をお祈りするばかり。
で、店主はこのマーマレードアワード日本大会の「アマチュア部門」に第1回から毎年出品して、そこそこの賞をいただいたりしていたのだけど、販売を始めてしまったからには今年は出すなら「プロ部門」ですね。アマチュアに比べると出品料が高いのでアレもコレもではなく厳選するか、しかし経験的には自己評価はアテにならないので、難しいところ。また、出品には2本送付、さらに予備を待っておきたいので、その分は販売できないというのが地味にコスト。そして「コストをかけて出品したのに評価がそんなに高くない」というリスクが、プロにはありますよね…。
しかしまあ、当店のことなので、そんな評価もネタとしてこのブログに書けばいいか!何卒お楽しみに!